瑠璃の雫



「ありがとう…
曜……
私謝らなきゃ
2人に…
八つ当たりしちゃったから……」


ベッドから出て扉へ向かう
「私帰るね。」




「うんその方がいいよ…


(ここは危ないから……)」

小さく呟いた後半の言葉
危ない?
その意味は分からないからそっとしておいた
彼は私の隣を歩かない
数歩後ろを付いてきた



家の近く
門の前には栗色の髪と緑の頭が見えた
栗色の彼女がこちらに気付くと手を大きく振る



「璃香〜。」.

彼女は私の下まで走ってその勢いのまま私を抱きしめた
むぎゅ
速い鼓動
シワシワの制服
少し遅れて気まずそうに目を逸らした翡翠がちらりとこちらを見た瞬間目があってごめんと頭を下げた




「私もごめんなさい。
私だって言えないことあるのに……
笑心と翡翠ばっかり攻めて…」





「うんん。」

笑心は顔を横に振って涙を零した
「私……」




何かを必死に伝えようと口を開こうとする彼女
ただ喉につっかえてそれは出て来そうになかった

「行こうか。」

彼女の手を引っ張って歩く
「翡翠は家で待ってて。」


















少し歩いたとこにある小高い丘
日が西へ傾き始めていた


「笑心。
もう無理に聞かない……
私の話聞いてくれる?」




















「私の休学してた理由…
今なら話せそう……。」



辛い記憶
思い出しただけで失神しそうになる怖い記憶
消したいけど消えない記憶





















「瑠佳がね…
いなかった時があったの……
夜中だから私なかなか気付かなかったんだけど…
ある日目が覚めて彼を呼んだんだけどいなくて
その次の時頑張って起きてこっそり兄について行った
だけど途中で暗い道に入ってしまって私は彼を見失ってしまったの。
そしたら後ろから捕まって…

"白い悪魔"の妹だなって言われて誘拐?された…
何のことかわからなかったけど……
沢山の男達に…………。」

ゔっ……

気持ち悪さと嗚咽が入り混じって絡まった
彼女は背中をさすってくれた



「最初は白い悪魔について聞かれた……
私は分からないって答え続けた。
その度に殴られたの……。」

消えずに残った傷跡を少し見せた


「痛かったけど……
暴力ならまだ耐えられた……



いつになっても何も情報を与えない私に嫌気がさしたんでしょうね
彼等はまた違う暴力で私を何度も燻しつけたわ…。」


















なかなか兄も助けに来てくれなくて
そう私を助けに来てくれたのは…




黒い天使……



男達がそういった




あれ……。



ぎゅっ

彼女が私を抱きしめた

「辛かったね。
怖かったね。
話してくれてありがとう。」

彼女の涙が私の方を濡らした












「私も話す。
私。汚いの。」



笑心が唐突にそう言って私は全力で否定した
けど
彼女は横に首を振る
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