もし明日、この世界が終わると言うのなら。
診断を受けた、その日から人に会うのが怖くなった。

「でさー、‥‥‥‥だったの。あり得ないよね。」

聞こえない。
親友のあきの言葉が時々途切れて聞こえている。

「柚月?」

「...あぁ、ごめん!考え事してて。」

「え?考え事って、柚月、好きなひとでもできたの?」

「違うって。」

「ふーん。」

「「「キャー!!!」」」

「えっ!?何かあったの?」

「あー、グラウンド。3年の沢田和輝先輩。今、サッカーでシュート決めたっぽい。モテるのに、彼女を作らないっていう噂の。」

「ふーん。モテるのに、勿体ないよね。」

「んー、多分、足の事だと思う。」

「足?」

「そう、足。先輩は、3歳からサッカー選手を夢見て、ずっとサッカーを続けてきたの。」

「3歳から?!...凄いね。」

「うん。だけど、2年生のときに左足の膝の靭帯を損傷して、それからサッカーはあまりしなくなったっていう話。」

「ほー。凄いね、その先輩。てか、あき、詳しいね。」

「お姉ちゃんが教えてくれたの。クラス一緒だし。」

「あ、そっか。」

でも、そんなこと、別に私には関係ない。
もう、何も聞こえなくなるんだから。
大切な親友の声も。家族の声も。

 自分の声も。
< 3 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop