この愛、スイーツ以上
突然の業務命令
「いたたっ……」
ここは玩具メーカー『トゴタン株式会社』のエレベーターの中で、私は勤務する総務部のある7階で降りようとした。
しかし、一歩踏み出したところで髪の毛が引っ張られて進めない。
痛い! どうして?
と振り向くとくせのある髪の毛が副社長である東郷涼太(とうごうりょうた)さんが着るジャケットのボタンに絡まっていた。
「なんか釣れた」
「冷静に冗談みたいなことを言わないでくださいよ。吉川さん、ちょっと待ってくださいね。今取るので……あれ? 取れないな」
「安田さん、時間ないからこのまま上に行こう」
「そうですね。吉川さん、このまま副社長室まで来てください」
今朝、寝坊した私はいつもならまとめる髪をまとめる時間がなかった。出勤途中で結べばよかったのだけど、急いでいたこともあり、ヘアゴムもシュシュも忘れてしまった。
オフィスの引き出しにヘアゴムが入っているから、出社まで我慢しようとしたのがいけなかったのか……美容院に行くのをサボって、背中の真ん中辺りまで伸ばしたのがいけなかったのか。
思い付くままにいろいろ後悔しても遅いのは分かっている。
ここは玩具メーカー『トゴタン株式会社』のエレベーターの中で、私は勤務する総務部のある7階で降りようとした。
しかし、一歩踏み出したところで髪の毛が引っ張られて進めない。
痛い! どうして?
と振り向くとくせのある髪の毛が副社長である東郷涼太(とうごうりょうた)さんが着るジャケットのボタンに絡まっていた。
「なんか釣れた」
「冷静に冗談みたいなことを言わないでくださいよ。吉川さん、ちょっと待ってくださいね。今取るので……あれ? 取れないな」
「安田さん、時間ないからこのまま上に行こう」
「そうですね。吉川さん、このまま副社長室まで来てください」
今朝、寝坊した私はいつもならまとめる髪をまとめる時間がなかった。出勤途中で結べばよかったのだけど、急いでいたこともあり、ヘアゴムもシュシュも忘れてしまった。
オフィスの引き出しにヘアゴムが入っているから、出社まで我慢しようとしたのがいけなかったのか……美容院に行くのをサボって、背中の真ん中辺りまで伸ばしたのがいけなかったのか。
思い付くままにいろいろ後悔しても遅いのは分かっている。
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