この愛、スイーツ以上
無意識にしてしまった行動なのかもしれないけど、その行動に気まずくなったようで副社長は視線を壁の方へと向けた。

私はじっと副社長を見て、ここに来た理由を伝える。


「人事部長から辞令を聞いたのですが、私はなぜここに勤務を命じられたのでしょうか?」

「それは、人手が欲しかったから」

「そうですか。でも、突然前触れもなく言われて……私の後任もいない状態では明日からこちらに来るのは難しいんですが」

「難しい?」


副社長は視線を私に戻して、眉間に皺を寄せた。


「はい。明日から勤務となると今日これから私が請け負っている業務を引き継ぐのは難しいです。ですから、申し訳ありませんが、来週からしてもらえないでしょうか?」

「まあ、確かにすぐでは大変か。うん、いいよ。来週の月曜はたしか……」

「はい、午前も午後も会議の予定が入っています」


安田さんがパソコンでスケジュールを確認して副社長に伝える。月曜日、二人は不在のようだ。不在の中での着任はさすがに出来ない。


「火曜日から来てくれる?」

「はい、かしこまりました」
< 17 / 207 >

この作品をシェア

pagetop