この愛、スイーツ以上
「由梨ー」


鏡越しではなく直接顔を覗き込んできた姉に「なに?」と短く返すと意味深に笑う。

嫌な予感のする笑い方だ。何を言うんだ?と思う暇もなくとんでもないことを言った。


「シンデレラになりなさい。お姉ちゃんが協力してあげるから」

「へ? シンデレラ?」


突然姉の口から出てきた『シンデレラ』の意味が分からなくて、キョトンとしつつも世界的に有名なシンデレラの話を思い浮かべる。

フェアリーゴッドマザーの魔法できれいなドレスに身を纏い、馬車に乗ってお城へ行ったシンデレラは見事王子様のハートを射止めた。

女の子なら誰もが夢見るシンデレラストーリーだけど、現実的に考えるとそうそうある話ではない。夢のまた夢のお話。

そう、簡単に起こることではない。


「シンデレラなんて、なに言ってるのよ。お姉ちゃんったら。そんなの無理に決まってるじゃないの」


あり得ないことを言う姉に苦笑するしかない。ところが透さんまでおかしなことを言う。


「いや、由梨ちゃん。無理じゃないと思うよ。既に一歩踏み出している感じじゃないか」
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