この愛、スイーツ以上
安田さんは副社長の耳元で電話をかけてきた人物を伝え、「分かった」と副社長は応接室を出ていった。急ぎの用らしい。


「申し訳ありませんが、しばし吉川さんがお相手していてくださいね」


戻っていく安田さんの背中を見送ってから、「座って」と虎太さんに促されて副社長がいた場所に腰を下ろした。

私で話し相手になるかは不明だが、子供の頃の話をもっと聞きたかった。今と違う副社長に興味がかなりわいている。


「副社長は昔、よく笑っていたんですか?」

「うん。天真爛漫な子だったよ。それが、ある日の祖父の一言で心を閉ざしたというか諦めてしまってね」

「何を諦めたんですか?」


副社長を変えてしまったというおじいさんの言葉は何だったのだろう。私は身を乗り出して、虎太さんの話を聞いた。虎太さんはその時のことを思い出したのか切ない表情で語り始めた。

その話は「涼太は小さい頃からうちの商品を大事にしていてね」から始まった。
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