この愛、スイーツ以上
ネクタイは今、私の目の前で緩めていて、第一ボタンも外した。

私に気楽にしてと言ったからか副社長はかなり気楽にしている。二人だけの食事に私はまだ緊張しているというのに。

ふと楽になった彼の首もとを見ると鎖骨まで見えていて、そこに一つのほくろがあった。

そのほくろがなんだかセクシーに見えた。


「東郷さま、すみません。よろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ」


戸の向こうから聞こえた声に私はハッとした。今、どこ見て何を考えていた?

そんな焦る私を知らない女将さんはメニュー表を持って入ってきて、それを副社長に渡しながら尋ねる。


「お飲み物を伺ってなかったのですが、どうされますか?」

「あー、そうですね。由梨、アルコールは飲める?」

「はい、人並みには飲めると思います」

「それは良かった。んー、ビールでもいいけど、今日は白ワインにしておくかな。これでお願いします」


副社長は手渡されたメニューを見ながら、何かを指差して女性に伝えた。ワインの銘柄が書かれている中から1つを選んだのだろうけど、多分いい値段がすると思う。
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