この愛、スイーツ以上
無理矢理ではないけれど、考える余裕がなく流されたキスだった。

焦っていたとしても少しでも迷う気持ちがあったなら、拒否した方がよかった。後悔しても遅いのは分かっているけど、後悔しかない。

今何度も意味不明なダメを繰り返しても、キスした事実は消えない。

なんてことをしてしまったのだろう。

明日から二人だけで仕事をしなければいけないこんな時に……。一瞬一秒でも油断をしてはいけなかったのに。

安田さんが副社長に近付かないようにと言ってくれていたのだから、断固拒否しなければいけなかった。業務に支障がでないといいけど、なんともいえない。

近付いてきたら拒める自信があると強くいえない。

意味があるならとも言ったのがそもそも間違いだった。意味があってもなくても近付かないでくださいと返すべきだった。


いろいろと不安が増えていく中での食事は終わり、店の外へ出る。


「ありがとうございます。美味しかったです」


いつのまにか会計を済ませていたらしく、私は一銭も払うことなく女将さんに「また来てくださいね」と見送られた。
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