この愛、スイーツ以上
「また明日も大平を頼っても困るしな。時間を決めようか? 俺と同じ時間にくれば待つことはないだろ」

「はい。でも、安田さんみたいに早くに来ようかと思っていまして」


安田さんと同じことは出来ないが、安田さんに言われた朝やるべきことを副社長が来るまでに終わらせておきたい。


「別に安田がいないからと由梨が早くに来るとか無理をしなくていいんだよ。今まで通りの出社でかまわない。だから、俺と同じ時間においで」

「でも、やっぱり先に来たいです」

「そう言われても鍵が俺のしかないから無理でしょ? 安田さんが置いていってくれたからよかったんだけどね」


確かに今ここにないものを欲しがっても仕方がない。それよりも私は副社長を困らせていない?

副社長が言うように同じ時間に来るのでいいんじゃないだろうか。副社長を困らせてまで早く来ることに意味は……ない。

自分勝手な要求だったと反省し、副社長の言う通りにすることを伝えようと彼の顔を真っ直ぐ見た時、調子抜けするほどの明るい挨拶がドアが開かれるのと同時に聞こえた。
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