この愛、スイーツ以上
時計を見ると副社長が出席予定の会議の時間も迫っている。

安田さんは副社長が出席するほとんどの会議に出席しているが、私はそこまでの代わりを務めなくていいと言われている。

話の続きは会議終了まで持ち越されたが、その後は来客予定もあり、今日中に話を出来そうにない。

そもそも私が藍華さんとの関係を気にする必要はないのではないかと副社長がいなくなってから思い返す。

だけど、いつも一緒に行っている藍華さんではなく私を選んだのはなぜだろう。

昨夜の副社長からの告白シーンがもわもわっと浮かび上がる。

『好きだ』の言葉に信じられない気持ちはあったけど、愛しいものを見るような彼の瞳と熱いキスから真剣な気持ちが伝わってきた。


熱いキス……安田さんから指示されたファイリングをしていた手を止めてぼんやりと副社長のデスクを眺める。もちろんそこに今副社長はいない。

やっぱりキスをしてはいけなかった。そこにいなくても顔が浮かんでしまう。

昨夜寝る前にも浮かんでしまって、何度もダメだと念じたというのに全然効いていない。
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