この愛、スイーツ以上
連れてきた犬はまだバッグの中にいる。狭い場所から出して欲しいのか甘えるような声を出している。


「あら、出たいのね。ごめんなさい、出してもいいかしら?」

「どうぞ。ずっとそこでは窮屈でしょうから、遠慮なさらず出してあげてください」


私の返事に軽く微笑んだ藍華さんはキャリーバッグを開けて、中にいた犬を膝の上に抱き上げた。

その犬はポメラニアンで見たことある顔をしている。副社長が飼っている犬にそっくりだ。色も同じ茶色。


「紫乃ちゃん?」

「紫乃を知っているの? でも、残念ながら紫乃じゃないわ。よく見て」

「あ、よく見ると右足が白いし、お顔も少し違いますね? でもよく似ていますね」

「似ているのは当然よ。紫乃とこの子は姉妹だからね。この子の名前は乃愛というの。しの、のあとしりとりになるのよ」


姉妹ということには驚いたけど、それよりも血の繋がりのある犬をお互いで飼っているなんて二人は相当親密な関係だと窺える。

名前もしりとりになるよう二人で考えてつけるくらい仲が良いと。
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