ひみこい。

〜secret 1〜

春の訪れを感じるような、小鳥のさえずりを聞きながら目を覚ます。


なんて、起き方を私は一度もしたことがない。
私の1日の始まりは、




「こらー!!桜!!さっさと起きなさい!!」




毎日、この母さんの声から始まる。




「んんっ、今起きた〜」




寝起きで舌の回っていない声で返事をして、のそのそとベッドから出る。


2階にある自分の部屋から、1階に降りて洗面所で顔を洗う。
そのまま、隣にあるトイレの扉を開けた。




「うぉっ」

「あ、ごめん!」




開けた扉を、直ぐに閉めた。
先客がいた…。


っていうか




「お兄ちゃん、朝から大きい方!?最悪!」

「はぁ!?朝にするのは良いことなんだぞ!多分!」

「多分でしょ!?それにお兄ちゃんの場合、ただの便秘でしょ!」

「違うわ!」

「あんた達、朝からうるさいよ!!」

「ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」




朝から、嫌なものを見て、言い争っていると最終的に母さんに注意されて終わった。

これも、いつもの日課だ。

ちなみに、私の家は、母、父、兄、そして私のごくごく普通の4人家族だ。

父の夏原 健司は、仕事でいつも朝が早い。
なので、朝に家の中で見るのは休みの日くらいだろう。

母の真由美は、専業主婦でいつも家にいる。
口うるさいとはよく思うが、とても良い母親だと思う。

そして2つ上の兄、隼斗は高校3年生で成績も良く、部活でやっている硬式野球は毎年甲子園にも行っている強豪だ。
それに加え、顔の整っている母さんと父さんから産まれただけあって、なかなかのイケメン。さらに、性格はリーダータイプで、とても気遣いができる優しい人柄だ。
これがモテないはずはない。

そして、そんな完璧な兄の妹が私、桜だ。
今年、お兄ちゃんと同じ高校に入学したばかりのピカピカの1年生。
成績、普通。顔も、普通。運動神経に関しては、皆無だ。
とても、あの夫婦から産まれたとは思えない程、平凡な私。

そんな私には、普通じゃない家族にも絶対に言えない秘密がある。


私は、そんな完璧なお兄ちゃんのことが

家族としてではなく、

1人の男の人として、ずっと好きなのだ。



それが、私の死ぬまで明かしてはいけない

大きな秘密だ。



< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop