俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
1 その結婚は不本意です
「あっはっはっは!!」

お見合い写真を掲げながら大爆笑する幼なじみに殺意が湧いた。

「笑いごとじゃない! 私、このオジサンと結婚させられちゃうんだよ!?」

こっちは人生最大の危機だっていうのに、なんなんだこの男は。デリカシーがないにもほどがある。

「だって……コレ……絶対お前より親父さんの方が歳近いだろ」

「ってゆーか、お父さんの友達だから、お父さんとタメ」

「あっはっはっはっはっ!!!」

とうとう写真を放り出して、カーペットの上にお腹を抱えてのたうち回る始末。
かつて学内一と評判だった端正な顔はすでに涙目で崩壊している。

「だから、全然笑えないんだって! 私、昨日の就職試験に落ちてたら、ホントにこの人と結婚することになっちゃうんだってば!」

典型的な亭主関白タイプの私の父は、女は家を守るものだなんて昭和を通り越して江戸時代までタイムスリップしてしまったような概念をいまだに振りかざしていて、女は勉学を終えたら結婚だの一点張り。

一流企業への就職を条件にここまでなんとか逃げ延びてきたが、その一流企業すらやんごとなき理由で退職し、再就職先の見つからないこの状況で、父のカウントダウンが始まった。

ということで、私、天宮莉依(あまみやりい)は、なにがなんでも就職しようと、ただいま就活真っ最中なのだ。

「ちなみにこのオッサン、職業は?」

「公務員」

「お、生涯安定! お見合い相手にしちゃバッチリじゃん!」

そういうこの男、新海大河(しんかいたいが)は、あろうことか大企業の会長の息子で、先日社長に就任したばかり。

たまたま小・中学校の学区が同じで幼なじみになったとはいえ、本来であれば庶民の私が関わることの許されないセレブリティーな人種なのだ。
人生の勝ち組まっしぐらである。

「あのね……大企業の社長サマがなに言っても、嫌味にしか聞こえないから……」

「社長なんて、窮屈で面倒なだけだぞ。俺もなれるもんなら公務員になりたかったよ」

絶対嘘だ。彼は公務員なんて柄じゃないことを、私は嫌ってほど知っている。
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