俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
『先にそれを言って撃沈したのは俺なんだけど』

「わかってるよ……言ってみただけ。でも、明日は、そっちに行ってもいい?」

『ああ』

頷いてから、私の様子をうかがってひとつつけ加える。『……今すぐ迎えに行こうか?』

「……ううん、やめておく。明日も仕事だし、まだ夕食も食べてないんだ」

『夕食? だってお前、実家に帰ったんだろう?』

「今帰ってきたばっかりで。ずっと篠原さんと会社に残ってたから――」

『篠原と……?』

声にぴりりと緊張が走り、しまったと思った。
大河はどうして私と篠原さんがこんな時間まで残っていたのか、その理由もいきさつも知らない。

『まさか初日から残業させられてたのか!?』

「残業させられてたんじゃなくて、私からお願いして――」

『まさかお前、篠原に嫌がらせでも受けてるんじゃないだろうな……?』

「違う違う、そんなんじゃないから、気にしないで――」

『ちゃんと説明しろ。篠原と、なにしてた?』

問い詰める口調が厳しくなってきて、これ以上濁すことが難しくなってきた。

けれど、やってはいけないと言われていた仕事に手を出した挙句、篠原さんに指導をお願いしてこんな時間まで付き合わせたと知れたら、どう思われるだろう。

また大河を怒らせてしまうかもしれない。
またひとつ、大河を辛い気持ちにさせてしまう。

とはいえ、早く一人前になりたいという私の気持ちは変わらないし、篠原さんだってそれを理解してくれたから遅い時間まで付き合ってくれたんだ。
どんな顔をされようと、社長に報告する義務はある。
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