俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「篠原さんに軽くお説教しておいた。また入社早々、退社に追い込む気? って」

「『また』……ですか?」

「彼、結構不器用で、他人への配慮に欠けるっていうか。いつも新人を厳しく育て過ぎて辞めてくの。だからなかなか後輩が育たなくって」

きっと篠原さんを思い出してのことだろう、恭子さんは沈痛な面持ちで眉間に人差し指を置いた。

「でも、あなたのことは珍しく褒めてた。今度の新人は少しはやる気があるみたいだって」

「それは……光栄です」

「意欲的だし、業界のこともよく勉強してるみたいだって、喜んでたわよ」

「……そうですか」

私はほっと胸を撫でおろした。
付け焼き刃にせよ、必死に勉強したかいがあったようだ。

出会ってすぐ敵意を見せられたときは、これから先どうなるかと思ったが。
どうやら今は、少なくとも嫌われてはいないらしい。
それが友好に変わるかは、これからの私の勤務態度次第だろう。

すると、恭子さんが不意に化粧直しの手を止め、こちらを見た。

「ねぇ。あなたはどうして頑張るの?」

「はい……?」

「だって、社長のお気に入りなんでしょう? 頑張らなくたってクビになることもないじゃない」

それを言うなら、恭子さんも同じはずだ。
少し前まで彼女自身が大河の秘書であり彼女だったのだから。

「恭子さんは、どうだったんですか?」

「言ったでしょ? 私は順番が逆だもの。彼の秘書になってから、付き合いだしたの」
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