俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
しばらくすると玄関のドアがガチャリと開かれて、今度こそ大河が帰ってきた。
開け放たれた自室の扉と、その中にしゃがみ込み丸くなっている私を見て、ぎょっと声を上げる。

「――莉依!? なにしてんだ、そんなところで」

「……大河。私がいない間、なにかあった?」

「は? どういう意味だ?」

「昨日、なにしてた?」

振り向いて彼を見上げたとき、目もとがピクリと動くのを私は見逃さなかった。
けれど、彼はなに食わぬ顔でいつも通り答える。

「なにって? 特に変わったことはなかったけど」

どうして隠すの?

なにもなかったと言うのなら――本当に恭子さんが荷物を取りにきただけで帰ったなら、私に隠さなくてもいいはずなのに。
どうして嘘をつくの?

不信感がいっそう強くなり、彼のことが信じられなくなってくる。

「……私がいないときに、恭子さんがきたの?」

大河の瞳が凍りつく。

「ついさっき恭子さんが、これを探しにきた。とても大切なピアスだって……泣いてた」

手のひらに包んでいたピアスを差し出すと、大河の表情がくっきりと歪んだ。

「あいつ……」

切なそうに唇を噛みしめながら、私の手の中からピアスを受け取り、ぎゅっと握りしめる。
恭子さんを見送ったあの日も、大河はこんな顔をしていたっけ。

彼が言うには、罪の意識に苛まれているときの顔らしいけれど――
――私には、忘れられない恋心に苦しめられているように見えてしまう。
< 127 / 173 >

この作品をシェア

pagetop