俺の花嫁～セレブ社長と愛され結婚!?～
成人式のときに買った振袖は、胸もとは桃色、袂は濃紅、グラデーションが目を引く牡丹と雛菊模様。
少々値は張ったがどうしてもこれが着たくて無理を言って買ってもらったのだ。
成人式だけではない、友達の結婚式にも着るから、自分が結婚したあとも袖を切って着続けるから――と説得して。

そのときはまさかお見合いで着ることになるとは思わなかった。

「莉依ちゃん、背筋をピンとして。前を向いて」

母が私の胴を帯でぎゅっと締めあげる。
昔お茶とお花を習っていた母は着付けくらい朝飯前らしく、慣れた手つきで私の体を着飾っていった。
さっと髪を結い上げ、振袖に合わせた濃紅色のつまみ細工の花飾りをつけ、頬にはチークを、口紅には少し濃いめ赤をひいた。

「ばっちりよ。とっても綺麗」

鏡台に映った自分の姿は、大河と一緒にスーツを試着したときとはまた違った雰囲気を纏っていた。

わずかにあどけなく、若返った印象に見えるのは、きっと着物の色が明るいからだろう。
今さらだけれど、大河に勝手に染められてしまった黒髪が、髪飾りの紅によく映えて、悔しいけれどとても綺麗だ。
< 132 / 173 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop