俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
階段を降りて下へ行くと、待っていた父、莉生、陣内さんが息を飲んだ。

「乗り気ないんじゃなかったの? そんなに綺麗におめかししちゃって、惚れられちゃったらどーすんだよ」

周りには聞こえないように、弟がそっと私の耳もとに話しかける。

「今だけだよ。お見合いが済んだら、ちゃんと断って――」

「もう断れるような状況じゃないと思うけど」

弟が顎をくいっとリビングの中央へ向けると、そこには小さな白木の台座があって、熨斗と水引のついた祝儀袋が置かれていた。

「これ、なに?」

「結納金だって」

「……え?」

さぁっと全身の血の気が引く。

「結納なの……?」

もはやお見合いどころの騒ぎではない。結納は結婚と同義――婚礼を決めた両家が贈り物を納め合い、契りを交わすものだ。

「莉依、座りなさい」

一番奥に陣内さんが正座し、その斜め前に父と母が座る。陣内さんの正面は、私のためにぽっかりと開けられていて――

「どれだけお待たせすれば気が済むんだ。早く始めるぞ」

他人の意見など聞く耳を持たぬ父が、膝の上で指をトントンと叩いて私を急かす。
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