俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「それでは、結納の儀を始めさせていただきます」

父と母と陣内さんが、深々と頭を垂れる。ワンテンポ遅れて弟が。それに習って、私も頭を下げた。
下を向いた拍子に髪飾りがしゃらしゃらと音を立てて、私の自由の終焉を祝うように儚く鳴った。

私、結婚するんだ……

すべてをあきらめ受け入れようとした。そのとき。

「莉依ー!!」

叫び声とともに、玄関の扉が開く音がした。
その場にいた全員がばっと頭を上げ、なにが起きたのかとお互いの顔を見合わせる。

答えられるものは誰もいなかった。
そのうちに、ダン、ダン、と廊下の木板が踏み鳴らされて、弾むような勢いでリビングへ飛び込んできたのは――

「莉依!!」

振り向くと、そこには肩を上下させて荒く呼吸する彼がいた。

「……大河?」

数時間前に会ったときと同じスーツ姿――けれど髪は乱れているし、ジャケットの前は外されネクタイは緩み曲がっている。
なにより、その表情は真剣そのもので、焦りをあらわにしていた。

「どうしてここに……」

すると似合わない正座で縮こまっていた莉生が突然「あー疲れた」なんて伸びをしながら立ち上がった。
だるそうに壁にもたれて、携帯の画面をちらつかせる。

「姉ちゃんが着替えてる間に、一応連絡入れといた。自分の彼女の結婚くらい、大河兄ちゃんにだって知る権利あるだろ?」

してやったりとウインクする莉生。大河は切れた息をならしながら、莉生に向かって頷いた。

「莉生……ありがとう、助かった」

途切れ途切れでそう答えると、父の真うしろに膝をつく。
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