俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「お父さん、莉依さんは言われた通り就職を決めました。どうして約束を違えてまで結婚を急ぐのですか」

結納を邪魔された父は額に青筋すら浮かべていたけれど、大河がきちんと正座して異議申し立てたのを見て、わずかばかり冷静になった。

「……娘が心配だからだ。早く嫁ぎ先を決めて、幸せな生活を送ってほしい、それに尽きる。といっても、新海くんに親心は理解できんだろうな」

「ええ。理解できません」

きっぱりと言い切って父に鋭い視線を向ける。
他人に有無を言わせぬ、意思の強い瞳――一瞬社長の椅子に座っているときの彼を思い出した。

「それが莉依さんの幸せだとは、到底思えません。初対面の相手と無理矢理結婚させられることが最上の幸せだなんて」

「……なに不自由なく暮らしてきたお金持ちの新海くんには、わからないかもしれないな。選択権の少ない庶民の気持ちなど」

大河がむっと眉をひそめた。父の皮肉に少なからず腹が立ったみたいだ。

「……なら俺が、なに不自由のない生活を莉依さんに提供します。莉依さんを俺にください」

「た、大河!?」

突然大河が頭を床につけて、父に向って土下座をしたものだから、私だけじゃなく母や莉生、陣内さんすらどよめいた。

けれど父だけは動じることなく、静かに首を横に振った。

「……できない。君と莉依は違いすぎる。釣り合うとは思えない。莉依には、これまでの生活環境、性格、さまざまなものを考慮してこの彼がベストだと父である私が導き出したんだ。君に莉依は預けられない」

そう答えると、父は確かめるように目線を陣内さんへと向ける。
陣内さんは困った顔をしながらも、自らを奮い立たせるようにごくりと喉仏を上下させた。
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