俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「就職するからには、ちゃんと一人前の仕事して成果を出せるように頑張りたいの!」

だから、職権乱用で秘書なんてポジション用意してくれなくていいです。そう言おうとしたのだが。

「……本気なら、応援してやるけど」

不意に大河が神妙な面持ちで呟いたから、私は言葉をのみ込んだ。

「本当に秘書になりたいと思うなら、秘書として通用するように、徹底的に知識を叩き込んでやってもいい」

「でも、私、秘書としての経験なんてないよ。いきなり秘書になんかなれるの?」

「最初からできないのは、誰だって当たり前だ。俺もいきなり立派な社長になれたわけじゃない。それをフォローしていくのが周りの役目で、企業としての在り方なんだ。入社してすぐはお荷物かもしんないけど、本気で莉依が頑張りたいと思ってくれるなら、これからいくらでも巻き返しができると思う」

半信半疑の顔の私に、大河は大丈夫だよとでもいうように笑ってみせた。

「それに、経験がなくても予習するくらいならできるだろ、世の中には参考書やハウツー本が山のようにあるんだし。あらかじめ知識を入れとくだけで、実務にぐっと入りやすくなると思うぞ」

大河は私の前に胡坐をかいて座り込むと、肘をついてふっと笑った。
その笑みが温かくて、今までのネガティブな思考がすっと払拭される。

「ま、俺としては三時になったらお茶とお菓子を持ってきてニコニコしてくれるだけのお飾り秘書でも十分なんだけど。お前がどうしても俺に甘えないでちゃんと働きたいっていうのなら、このツケは出世払いってことにしといてやるよ」

お得意のひまわりのような笑顔で言う。その無邪気な顔を見ていると、頑張ればなんでもできるんじゃないかって、私を取り巻く世界に可能性が満ち溢れてくる。
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