俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「……私、お飾り秘書なんて嫌。ちゃんとお給料分働いて、胸を張って家に帰りたいよ。女は結婚がすべてじゃないんだぞって、お父さんを説得できるように」

大河がニッと口の端を上げる。まるで、私がこう言うのを待っていたみたいだ。

「俺の秘書育成スパルタ指導、受けてみる? 言っとくけど、秘書っていうのはなんでもこなさなきゃならないオールラウンダーだからな。その辺の総合職よりよっぽど過酷だぞ?」

こちらを覗き込んでくる瞳は、気使わしげに見えて、それでいてついてこいと言っているみたいで――

「……お願いします」

決意の眼差しを返すと、私の両頬をパンと勢いよく両手で包み込み、気合を注入してくれた。

「よし。手取り足取りみっちり指導してやるから、覚悟しとけよ」

「わ、わかったよ」

「頼んだぞ、莉依。俺の最高の秘書になってくれ」

俺以外を見るなとでも言うように、私の顔を真っ直ぐ大河に向けさせる。

このときの私がもしも冷静だったなら、秘書だなんて柄に合わない職業、安請け合いしなかったかもしれない。
けれど大河の笑顔が嬉しくて、彼を、そして自分自身を信じてみたいと思ってしまった。

こうなった以上、捨てる神あれば拾う神あり、拾ってくれた大河に縋りついて頑張っていくしかないんだ。
< 20 / 173 >

この作品をシェア

pagetop