俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
6 敏腕社長様の飴とムチ(前)
月曜日の朝。
昨日と同様、空は青く清々しい。けれど、私にとっては眩し過ぎる、緊張感の漂う朝だった。

「そんなに固くなるな。初日なんだから、見学気分で来ればいいんだよ」

「そういうわけにもいかないよ。転職だって秘書だってなにもかも初めてなんだから」

「ま、気持ちはわかる」

ダイニングテーブルでこんがりきつね色に染まったトーストとブラックのコーヒーを飲みながら、大河は頷く。

「緊張するのは今だけだ。そのうちすぐになれるさ」

「そうだといいけど……」

サラダを箸でつつきながら湧かない食欲をごまかしていると。

「ところで莉依。会社にいるときは、俺に話しかけるな」

ふと大河がその手を止めて、なんとも言えない顔で切り出した。

「ああ、わかってるよ。『大河』じゃなくて『社長』って呼ぶし、ちゃんと敬語で――」

「そうじゃなくて」

わずかに目を細めた大河が、その単語のひとつひとつを強調して諭すように言う。

「話しかけるな、って言ってる。仕事の話題も、全部第一秘書を通せ。俺に直接、話を振るな」

「全部……?」

どうしてそんなことを、と眉をひそめた。
仕事の話さえしちゃいけないの? 私は大河の秘書なのに?

ひょっとして、秘書でも第一と第二では激しい序列争いがあるのだろうか。 そういうものなの?

「……わかった」

頷く私を見て、大河は食事を再開する。
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