俺の花嫁～セレブ社長と愛され結婚!?～
父は眉間に皺を寄せたまま、日本酒の入ったグラスをほんの少しだけ傾け、舌を濡らして味わった。

「聞いたぞ。新海くんと同棲を始めたらしいな」

家を出ることになった初日、大河が母に紛らわしい電話を入れてくれたせいで、私と大河は恋人同士という設定になっている。
実際はどうであれ、とりあえず彼女の体で話を進めた方が早そうだ。

「同棲まではいかないけど……お付き合いはしてる」

「それで、結婚はいつなんだ」

いきなりそれかと、私はぎょっとたじろいだ。

父の顔はいかにも平静で、無感情を装っているが――娘である私にはわかる。こういうとき、たいがい父は怒っている。
自分の思い通りにならなかったことが気に食わないのかもしれない。

「早いよ、まだ付き合い始めたばかりなのに結婚なんて」

「結婚の話がでなければならない年だろう」

「いまどき二十七で結婚なんて早い方だよ。三十過ぎてからする人だってたくさん――」

「どうせ新海くんはお前と結婚する気などないのだろう。さっさと別れてしまいなさい」

「なっ……」

なんの話も聞かずに決めつけられて、さすがの私も腹が立った。
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