俺の花嫁～セレブ社長と愛され結婚!?～
「失礼なこと言わないでよ！　娘が捨てられるみたいに！」

「当然だろう。数件先にあるあの豪邸をよく見ろ。彼の家はうちとは比べ物にならない大財閥だぞ。釣り合うわけがない」

「そんなことない！　大河とは、ずっと一緒にいるんだから――」

「友達と結婚は別だ。新海くんだって、自分のお家柄に相応しい人間を妻として選ぶだろう。お前は遊ばれているんだよ」

家柄に相応しい――確かに私と大河には身分の差がありすぎて、はっきり『違う！』と否定できないところが忌々しい。
大河はそんなこと気にしない――そう願いながらも断言することができない。

「勝手なこと言わないで！」

背中を向けて二階の自室へ逃げ込もうとするも、父の言葉が執拗に追いかけてくる。

「お見合いは白紙になどしない」

「なっ――」

慌てて振り返ると、父は立ち上がり、ダイニングテーブルのうしろにある棚の引き出しから紙を一枚取り出した。

それは――婚姻届け。

しっかり相手の名前が書かれていることに驚いて――むしろその勝手さに怒りが湧き上がってきて、頭にカッと血が昇る。

「就職が決まれば結婚しなくていいって言ったじゃない！　約束と違うわ！」

「お相手の陣内さんは、お前に仕事があってもいいと言ってくださってる。結婚後も働いていいそうだ。心の広い男だろう」

「な、なにを勝手に――！」

もうなにを説得しても無駄かもしれない。父はなにがなんでも私を結婚させるつもりだ。
付き合ってられない――私はくるりと踵を返し、その場から早々に立ち去ることにした。

「とにかく、お見合いなんてしないから」

それだけ言い放って、階段を昇り二階へ向かう。

「明日の夜は早く帰ってこい！　陣内さんにご挨拶するぞ」

「冗談言わないで！」
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