俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
これ以上は聞こえないふりで自室にこもり鍵をかけ、扉を背に大きなため息をついた。

明日は大河の家に泊まらせてもらった方がいいかもしれない、仕事から疲れて帰ってきて、その上お見合い騒ぎだなんて、まっぴらだ。
さすがに当人である私が不在となれば、お相手の陣内さんとやらもあきらめて帰ってくれるだろう。

荷物をおろし携帯を確認すると、不在着信が一件。大河だった。
折り返し電話してみると『……莉依』私を呼ぶ声は苛立っていて、なにかあったのかと眉をひそめた。

「どうしたの?」

『お前は俺を翻弄しているのか?』

「翻弄?」

私がいつ大河を翻弄したっていうの? された覚えならたくさんあるけど。

大河のため息が、電話越しでもよく響いてきた。

『あんな顔で俺の前から姿を消して、その上「会いたい」とメッセージを送っても無視。こんな時間まで放置とは。やってくれるじゃないか』

「え? なんのこと?」

『仕事中、俺に突っぱねられて、死にそうな顔して部屋から出てっただろう』

ああ、と私は日中の出来事を思い起こした。
今日、最後に大河と別れたのは社長室。仕事をさせてくださいと頼み込んだところを一蹴され、ひどく落ち込んだ直後だった。

『お前のあの顔に、俺が一日どれだけへこまされたと思ってるんだ』

「言ったのはそっちじゃない。どうして大河がへこむのよ」

『言わせたのはお前だろ。だから俺に話しかけるなとあれだけ言っておいたのに』

はぁぁ、と再び大きなため息が聞こえてきた。不機嫌な顔の大河がありありと目に浮かぶ。

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