優等生、中川君。
「なんか偶然だね。」
あたしは笑って言うけど、中川君は顔色ひとつ変えず
「そうかな。僕はいつもいるから、偶然とは思わないけど。」
と言った。
「そうなの?」
「うん。」
「ふぅん。」
「………。」
会話終了。
中川君は、黙々と本を読んでいる。
あたしはケータイを見た。
正人からの、メールはない。
[お問い合わせ中…]
[メールはありません。]
はぁ…とため息をつく。
ため息をつくと、幸せが逃げるって言うけど、その度に幸せが逃げていたら、あたしは将来どれだけどん底に落ちるのだろうか…。
「…どうかしたの?」
ケータイを見つめるあたしの姿を見て、中川君が話かけてきた。
「いや、うん…ちょっとね。」
「ふぅん…。」
「…あ、中川君、ご飯食べた?」
「イヤ、食べてないけど…。」
「食べに行かない?多分今なら空いてると思うし」
「あぁ。」
中川君は短く返事をし、本を閉じて、あたしに
「行きたいところ、ある?」
と聞いて来た。
あたしがうなずくと、じゃあ行こうか。と、歩きだした。