白い虎と蝶 ~絆~
私はいつでも捨てられるってことなんだってずっと思ってた。
魁さんが亡くなって、なんで刺青を入れなかったのか分かった気がした。
きっと刺青をしてない私でも捨てないって言いたかったんだ。
そんな思い出に浸りながら歩くと隣に黒の車が止まった。
すぐに後部座席の窓が開く。
そこには朱雀ではなく、黒狼のメンバーの五月女珱次(さおとめ えいじ)がいた。
「…………」
「乗れ」
「…………」
黙ったまま珱次の反対側に回って後部座席に乗る。
さっきは見えなかったけど二階堂昇太(にかいどう しようた)がそこにいた。
運転しているのは黒狼が入った組の組員だろう。
「どーも」
ニコリと笑った昇太に私は何も返さずにただ外を見ていた。
見ていなくてもわかるぐらい昇太は私をじーっと見ていた。
「…………」
「ほんとに鍵をかけたんだね」
「…………」
疑われていたのだろうか。
ただでさえ、無表情だから何を考えているのか分からないって言われる。