白い虎と蝶 ~絆~
俺は話を聞きながらすぐにでも朱雀を殴りたい衝動を抑えた。
いまは朱雀を殴るよりもつばきがどこにいるのかが問題だ。
「かなは隆と魁にしか懐かなかった。俺には返事をしてくれたが魁たちのようにはならなかったな」
「何が言いたいんすか」
慧が警戒しながら言う。
「考えてみろ。会話してたのは魁と隆のみ。
その魁がいない。今は隆だけなんだ。
その隆にもさよならを言ったんだ。九条家に戻ってこないってことだろう。
白虎のみんなにさよならって言ったのはお前らを信じようとしていた自分をここに置いていくってことじゃねーのか?」
「「「「っ!?」」」」
信じようとしていた自分をここに置いていく?
置いていくものなんかないだろ?
置いてなんか行かせるかよ。
息を飲んだのは俺たち白虎だけで、隆は組員が話した時にその意味を分かっていたようだ。
「かなのあとを追えるか?」
組長が隆に問う。
「追えるよ」
その問に答えたのはひかるだった。
「追える」
次には彗が答えた。
「なぜお前らがそう言える」