白い虎と蝶 ~絆~
手?
「っ!!」
言われた通りに自分の手を見る。
どうやら無意識のうちに私はかなめの胸元の服を握りしめていたようだ。
その手をすぐに離し、逆の手で掴んでいた方の手を握る。
「………………」
「なんかあったのか? お前、さっきからおかしい」
「あ、いやこれは……」
この話は誰にも言っちゃいけない。
白蝶をやっている限り、弱いところは見せちゃいけない。
約束を守るためにも話しちゃいけない。
私より辛い思いをしてる人はいっぱいいるんだから。
私がそんなことで泣いちゃいけない。
私より辛い思いをしてる人に失礼だ。
「…………」
「無理には聞かねーよ」
そー言ってかなめは、目の前の空き教室のドアを開ける。
いつまでも座ったまま動かない私に「入らねーの?」と言った。
「は、入る」
やっぱりかなめは安心する。
それに懐かしく感じる。
全然似てないのに魁さんじゃないのはわかってるのに、どこかあの人と重ねてる自分もいた。
だからかな?
かなめには嘘をつけない。
全部見透かされてる気がして。
私はカバンを抱えて空き教室に入った。