白い虎と蝶 ~絆~
幼い✕✕✕
"まだ"あの幸せがあった頃。
あの頃は、幸せだった。
幼い子を空から見下ろしている今の自分。
『お母さんお母さん!』
その子は風船を両手に一個ずつ持ってお母さんと呼ばれた人のもとに走った。
『あはは………』
お母さんが笑う。
『見て見て!えへへ。 これ、お母さんにあげる!』
笑いながらお母さんに持っていた風船をひとつ差し出す。
『どこから貰ってきたの?』
『あそこだよ!!』
その子は風船のアーチを見て指さす。
この日は幼稚園の運動会。
終わってから風船を眺めていたその子に先生が持っていってもいいよと言ってくれて持っていったのだ。
アーチからお母さんに視線を戻す。
だけど、お母さんの顔は見えない。
『お母さん?』
始めは、顔だけだった。
でもだんだんと『お母さん』が見えなくなっていく。
まるで、その子の前から消えるように……。
『お母さ………』
「いかないで……」
その子は消えそうなお母さんに手を伸ばす。
その手がお母さんに届くことは無かった
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