目の覚めるような赤だった



優衣からメッセージアプリで連絡がきた。
こんな内容だった。

『真香元気ですか?』
『この前、真香のお母さんに会ったよ。
真香が元気か気にしていたので、元気にやってますと伝えたよ』
『お母さんに連絡してあげてね』

この内容だけだとはっきりしないけれど、お母さんは優衣をわざわざ呼び出したのだろうか。そして、私の様子を知りたがった。

優衣とは1週間に2、3度メッセージアプリのやりとりをしている。ほとんど優衣からくる他愛のない話題に私が返す形だけど、一応生存確認にはなっていると思う。

一方でお母さんとはまったく連絡をとっていない。こちらに着いた時に無事に着いた旨をメッセージで送っただけだ。
聖が一度様子を見にきたし、暮らしぶりは伝わっているとは思うけれど。

私はスマホをちゃぶ台に置き、朝食の準備をしようと立ち上がった。優衣にはあとで返信しよう。お母さんには……連絡した方がいいのはわかってる。
こうして離れてみて、別々に暮らしてみて、率直に寂しさは感じていた。
まるで気が合わず、一緒にいれば息苦しさしか感じない関係なのに、慣れない住宅でどこにもお母さんの気配を見つけられなければ妙に心細い。迅といることで幸せや温かさは感じるけれど、母親の不在は別問題だった。自分で決めたことなのに。

私の心の中にはすごく幼い子どもがいるのだと思う。
お母さんに嫌われたくない。
期待に応えたい。
だけどできない。
どうしよう。
お母さん怒らないで。
お母さん笑って。
……結局マザコンだったのかな、なんて妙に納得してしまう。
< 105 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop