目の覚めるような赤だった
夢の跡
「真香ー!」
高校の校門を出たところで、後ろから呼びかけられた。振り向くと冷たい風を切って走ってくる優衣がいた。白い息を吐き、鼻の頭を赤くして。制服に似合うオレンジ色のマフラーがはためいている。
「優衣、今日いたんだ」
「部室で後輩が送別会開いてくれてさー。帰ろうかってときに外見たら真香が歩いてくのが見えた」
「そっか。私は担任に報告」
入試の結果が全て出たのが昨日、私は担任に合格報告のため学校を訪れていた。
「川田先生喜んだでしょー。第1志望はもちろん、受けたとこ全部合格だもんね」
「おかげさまでね。優衣に続けて嬉しい」
「私は推薦だもん。楽してすんません」
「体育大は実技もあるじゃない。楽してないわよ」
3月の真ん中だ。まだまだ春遠く感じる寒さが続いているけれど、私も優衣も進路が決まった安堵感にふっと微笑み合う。
「来週が卒業式でしょ?早いよねぇ。答辞の原稿考えた?」
私は曖昧に笑う。なぜか卒業式で答辞を読む大役が回ってきてしまったのだ。
「んー、なんとなくね。でも、なんで私なのかな。こういうのって生徒会長とかがやるんじゃないの?」
「元々は成績優秀者がやる伝統らしいよ。観念して。真香が壇上に立ったら声援送るから」
「絶対やめて」
バス通学の優衣を見送るためにバス停に寄り道する。
5分ほどで到着と電光掲示板に表示されるのを眺めて、優衣とこうして帰ることももうないのかななんて思った。