目の覚めるような赤だった
「ふん、そうしな。マナカ作の不恰好なぼたもちを期待してるよ」

意地悪を混ぜてくるのもいつものことだ。
シンクに並ぶと聖が、ふきのとうの細かいゴミまで洗い流しつつぶつぶつ言っていた。

「美味しいのかな、これ。こんなに苦労しておいしくなかったらしんどい」
「苦味があるって聞いたことあるよ。聖はお子様だから食べられないかもね」
「うるせー。子ども扱いすんな」

これで聖は好き嫌いなくふきのとうを食べるだろう。私も初めてだけど、最近はなんでも食べてみることにしている。トシさんが言っていた。

私たちは食べて働いて生きていく。
食べることは生きる上で一番目か二番目に大事だ。


ぼたもちはトシさんの期待通り不細工な仕上がりになった。トシさんは見本でふたつばかり作っただけで、ほとんどを私に任せ、自分は稲荷寿司を作り始めたのだ。

私は不器用にもち米を俵型にし、あんこでくるんだ。この作業がとても難しい。上手につけないと、すぐにあんこははがれてしまう。
さらに私の作る俵型が大きいようで、あんこがついて一回り大きくなると、巨大なぼたもちの完成。売っているものの倍くらいあるそれは、なかなかの迫力だった。

「いいねぇ。ほら、坊主、写真撮ってSNSだかに流してやんな。マナカの巨大なぼたもちを拡散して笑ってもらいな」
「トシさん、ほんと意地悪ばばあだね!」

聖が遠慮なく言って、トシさんに小突かれている。でも聖はちゃんと写真を撮って、うちのお母さんと伯母さんにメッセージアプリで送っていたみたい。比較にトシさんが作った上手な方と並べていた。
これは一生笑われるネタを作ってしまった。嫌になってしまう。

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