目の覚めるような赤だった
世界から色が消えた



迅が災害救助の現場で行方不明になってふた月半が経った。
鉄砲水が発生して流されたのは迅と同僚の四人で、迅以外は全員救助され無事だった。最初の災害で行方不明になった現地の人たちが遺体で見つかる中、迅だけが見つからなかった。
伯父さんと伯母さんは現地へ赴き、自分たちの手で迅を見つけたいと捜索活動の補助もしてきた。私と聖は毎日毎日祈った。どうか無事で戻ってきますように。どうか奇跡が起こりますように。
迅は見つからなかった。

ふた月、私たちはあてのない吉報を待つのをやめた。
伯父さんと伯母さんは空の棺を用意し、迅の葬儀を執り行った。迅の同僚や上司、友達が山のように弔問に訪れ、葬祭場は人いきれがするほどだった。幸いなことと言っていいのかわからないけれど、捜索隊で亡くなったのは迅だけだった。
通夜は蒸し暑い雨の晩で、私は制服を着て隅に座って焼香の列に時折頭を下げた。期末テストが目前だったけれど、どうでもいいことだった。たぶん、私は今回もトップだ。
従兄を失っても。
最愛の人を失っても。
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