目の覚めるような赤だった
コンビニの前に並んで、その甘くて冷たい飲み物を飲んだ。初夏の青空に似合う飲み物だった。だるさの残る身体に心地いい。

「なんか変な感じだよな」

聖が空を見上げてぼそっと言う。

「兄ちゃんふらっと帰ってきそう。死に顔、見てないせいかな」
「うん」

わかる。私もそんな気持ちが消えない。
私は迅が完全に死んだと思えない。運よく助かっているんじゃないかなんて希望をまだ捨てきれていない。それと同時にその希望に縋っていられるほど、私が子どもではなくなってしまったことにも気づいた。
迅は死んだのだ。
鉄砲水に遭い、濁流にのまれて死んでしまったのだ。遺体がみつからないのは海まで流されてしまったからだろうと、皆は言っていた。
迅は帰ってこない。
わかっている。私はもう充分すぎるほどわかっている。

「真香、全然泣かないから心配」

シェイクのストローを弄びながら、聖が言った。

「あの日から、おまえが泣いてるとこ見たことない。我慢してんの?俺、おまえが薄情なヤツじゃないって知ってるよ」
「ひとりでは、少し泣いたよ。でも、それだけ」
「それだけなことあるかよ」

私の冷淡な言葉にごまかされてくれない聖。私の本音なんかわかっているのだ。伊達に姉弟みたいに育っていない。聖が静かに呟く。

「兄ちゃんに会いたいな」

その言葉は本当に心の底からの言葉で、私は堪えていた涙がぶわっと目の際に浮かぶのを感じた。

少しだけ泣いた?ええ、そんなの嘘。この二ヶ月、この世の終わりくらい泣いた。
私の世界の唯一だった迅が死んだ。私の色のない世界にたったひとつキラキラ輝いていたのは鮮やかな迅だった。

迅がいない。私の世界から色が消えた。
すべての意味が消え去った。
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