chocolate mint
***


今まで我慢を重ねて形を保ってきた理性は、コーヒーに落とした角砂糖のように、元の形も分からなくなるくらいあっという間に溶けて跡形もなく消えてしまった。



……もう戻れない。



これからは、友達としては側にいられない。



泣き出しそうなほど心は痛むのに、身体中に感じる熱は絡み付くほどに甘くて、苦くて、切なくて……



律動を刻む度に身体中を駆け巡って、心ごとどろどろに溶かされてしまう。



僕が友情と引き換えにして手に入れたものは、苦くて甘い欲情だった。



その甘い熱に侵されたまま、必死に愛しい人の名前を呼ぶ。



『ー香織ちゃん』


……お願いだから


『ー香織ちゃん…』



……今、この瞬間だけは僕の事だけを考えて




……もう



……空気みたいに心に残らない存在に戻るのは嫌なんだ。




好きだよ、とも愛してる、とも言えないから。



だから、ただ今だけは名前を呼ばせて。


伝えられない言葉の代わりに


何度も何度も繰り返した。


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