chocolate mint

***


「お疲れー」



暫く経って『Felitita』の閉店時間を過ぎた頃、和希さんが新店舗の方に現れた。



「お疲れ様です。……もう締めの作業終わったんですか?」


「ああ」



……何だよ、忙しいなんてやっぱり嘘じゃないか。



『Felitita』の人手が足りないからと呼び出されたはずなのに、一時間もしないうちに新店舗の方に行かされた。



顔に出さないように気をつけてはいたけれど、内心は不満でいっぱいだった。



そんな僕の気持ちなんて全く無視して、さっきから青木さんと有紗さんが目の前でコースのメインを何にするか延々と話し合っていた。




「裕介、ほら、忘れ物だ」




二人に向けている視線を遮るように、和希さんがカウンターの上に僕のスマホをポンと置いた。



「ありがとうございます…………あれ?事務所のデスクに置きっぱなしにしてましたか?」


『Felitita』に着いてすぐ、着替える間も無いくらいに急かされてフロアに入ったから……うっかり置いたまま忘れてしまったのかな?



でも鞄から取り出した記憶も無いけど……


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