chocolate mint
……絶対にばれてるよな。
厨房の陰に隠れてハァーッと深いため息をつきながら、その場にへなへなとしゃがみこんだ。
ほんと、いつもの僕らしくない。
笑顔を貼り付けたままのポーカーフェイスができないなんて。
顔から熱が引かない。
ちょっとでも油断すると、さっきまでの甘い時間に意識が引き戻されてしまう。
「……僕って……やっぱり、やらしー奴かも」
気持ちを言わないまま強引に抱いた事を心では後悔しながらも、身体だけはさっきまでの熱を確実に覚えていて……
もう一度欲しい、とずっと疼いている。
……たぶん、もう、知らなかった頃には戻れない。
***
「……で?裕介に俺がスマホを受け取ったって話して何の意味があんの?」
「……別に。私の名前が出なかったら、それでいい」
「そんなすぐばれるような嘘ついて……お前は何がしたいんだ?裕介が彼女とこじれたら責任取れんの?裕介だってさすがに怒ると思うけど」
「こんな大事な時に浮かれてるほうが悪いのよ。振られたら振られたで、またちゃんと仕事してくれるでしょ」
……今回は、そんな単純なもんでもなさそうだけどな。
「……裕介、ごめんな」
妹の暴挙に内心では呆れながらも、和希は、
まだ自分が直接関わる段階ではないと考えていた。
「……何か言った?」
「……いや。何でもないよ」