chocolate mint
「あれっ……いない」
気持ち(と身体)を落ち着かせてシャワーから戻ると、寝室から香織ちゃんの姿が消えていた。
さっきは気がつかなかったけど、シーツが洗われている。
洗って、乾かして、敷いてるうちに眠っちゃったのかな。
……って事は、僕がシャワーを浴びてるうちに目を覚まして、昨日の事が気まずくて部屋に戻った?
とにかくシーツを洗ってくれた事と、スマホを届けてくれたお礼だけは言っておきたくて、彼女の部屋をノックした。
「香織ちゃん。起きてる?」
きっと気まずい思いでいるだろうけど……すぐに何か返事をしてくれるだろうと思っていたのに、暫くしても何も返事が返って来なかった。
もう一度ノックをしようか迷った所で、ようやく言葉が返ってきた。
「起きてる」
「あの、さ……シーツ……洗ってくれて、ありがと」
彼女が恥ずかしがらないよう、サラッと言うつもりだった。
だけど、香織ちゃんからの返事が思いがけず冷たい響きを持っていたのに動揺して、言葉に詰まってしまった。
結局、それ以上話は出来なかった。
スマホのお礼も、口にできないままで……
不機嫌な理由は何なんだろう。
頭が痛いと言っていたのに、看病もやんわりと拒否されてしまった。
昨日から何も口にしていない様子だったので、冷蔵庫から清涼飲料水を取り出そうとして、中に入っていたはずのビール缶が消えている事に気がついた。