chocolate mint
ふと頭に浮かんだのは、純くんが好きなはずの女(ひと)の顔。
「だって純くんは、奈緒子ちゃん……」
そこまで口にしただけで、凍てつくような視線に射ぬかれて、慌てて言葉を止めた。
……これ以上話を続けたら、グーかパーで殴られる!
「うまくいかないから、香織の気持ちを利用したんでしょ!!」
んな分かりきった事を聞くな!……とやっぱりグーで肩を殴られた。
僕たち幼なじみじゃなくたって、純くんと親しい人なら純くんが奈緒子ちゃんの事を好きなのはみんな知っている。
だから、確かに告白したのは先輩からなんだと思う。
酔ってたから冗談みたいな告白だったって言ってたかもしれないけど……酔ってたから本音が出たって事じゃないのかな……
それって……それだけ真剣に好きだったって事じゃないか。
先輩からチョコミントのタブレットをもらったあの日。
純くんが体育館に居るって聞いて、先輩はかすかに視線を泳がせていた。
だけど、体育館には行かずにその場を去った。
本当は好きな人に会いたかったけど、自分が部活に顔を出したら後輩の迷惑になるって、たぶん一瞬だけ迷って止めたんだろうな。
自分の気持ちよりも先に、人の事を考えてしまう優しい人だから。
先輩の気持ちを思ったその時、胸が一瞬だけチクリと痛んだ。
その痛みの正体も分からず、先輩にも会えないまま、それから6年の月日が流れた。