chocolate mint
あんなに傷つけてしまう前に……香織ちゃんの中にまだ菊井の事を想う気持ちが残っていたとしても、ちゃんと好きだって伝えれば良かったんだ。



弱いところにつけこんだ最低な男だって嫌われたっていい。



だけど、誰にでもこんな事をする訳じゃない。ずっと好きだった人だからだって、



香織ちゃんだからなんだって。




……それだけはちゃんと伝えるべきだったのに。




***


叱られても何も言わないどころか、フッと苦笑した僕を見て、有紗さんは何か気持ち悪い物でも見たように顔を歪めた。



たぶん、いつもだと空気が悪くなりかけるとすぐに謝る僕が、こんなに怒られても何も言わないのはおかしいと思い始めているだろうし……苛ついてもいるのだろう。





ブルブルブル……


その時、テーブルの上に置きっぱなしにしていたスマホが振動した。



画面に視線を移すと、LINEのポップアップが見えた。



『ユカリ』からのメッセージだと確認して、やっと連絡が来たのか……とホッと安堵の息を吐いて、メッセージを見た瞬間……頭の中が真っ白になった。




メッセージには、たった一言だけ、




『香織が、ヤバい』




と書かれていた。




< 123 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop