chocolate mint
***



「もう帰ります」




メッセージを目にした瞬間に、僕の心は決まった。



……ここにいても、無駄に時間を過ごすだけだ。一刻も早く香織ちゃんの所に行かないと。



スマホと鞄を掴んで、急いで立ち上がる。




「裕介!!」




入り口に向かって歩き出した僕の側にいつの間にか有紗さんが来ていて、その華奢な指からは想像できないくらい、ギリッと音がしそうなほど強くカバンを掴まれた。



綺麗にマニキュアが塗られている長い爪が目に入り、一層不快な気持ちが込み上げて来る。



この人は、昔はこんなに指先を飾り立てるような事はしていなかった。



きちんと手入れはしていたけれど、爪は短くて、いつでも厨房に入れるようにとマニキュアを塗るのは控えていた。




「……離してもらえませんか」



自分でも驚くくらいに冷たい声が出たけれど、力任せに振りほどかなかっただけまだましだろう。

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