chocolate mint
「……嬉しかった?」



今度は、僕が聞き返す番だった。



気を抜いていたら、さっきの香織ちゃんのように「……はぁ?」と間の抜けた声だって出ていたに違いない。



だけど、彼女の目は真っ直ぐに僕を見据えていた。



その真剣な眼差しに、僕の心臓は握り潰されたみたいに、キュッと音を立てて縮まった。




「うん。……今までみたいに仲良くなんて出来ないかもしれないって……覚悟してた。裕介くんは、私と……その……寝ちゃった事を、後悔してるかもしれないって。そう思ってたの。だから心配してくれて嬉しかった」



「……今も、何も意識しないで普通に会話ができて嬉しかったの」



その告白に、思わずピタリと頭を撫でる手が止まる。




……この感覚は、いつも香織ちゃんとだけしか共有できないんだ。



紫ちゃんや、両親……血が繋がっている家族でも、ありえないこの感情を。



香織ちゃんは、いつも僕と同じタイミングで同じ事を考えていて、僕が心で思っていた事を、いつも同じように口にしてくれる。



だから、存在感が全く無くても、親友の弟っていう友達としては微妙な立ち位置にいても、いつも僕は期待をしてしまって、この片想いを止める事ができなかったんだ。




いつか、この『好きだ』って感情すら同じように共有できるんじゃないかって…………そう期待してしまっていたから。



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