chocolate mint
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夜になって家に現れた崎山先輩は、拍子抜けするくらい元気だった。
先輩を元気にしてあげたい!と気合いを入れて料理をしている僕と、出来上がった料理に次々と手を付けて、主役が到着する前からこちらも既に『出来上がって』いた紫ちゃんとのギャップが先輩のツボに入ったらしく、ずっと僕たちを見比べては笑っていた。
やがて、紫ちゃんはソファーにひっくり返って眠ってしまった。
……こんな風に酔って寝ちゃうなんて、珍しいな。
眠っている紫ちゃんに毛布を掛けながら、こう見えて、紫ちゃんも先輩と会うのに緊張していたんだろうなと思った。
だけど、これじゃ家に呼んだ意味が無いよな。
本当は紫ちゃんが話すべきなんだろうけど、僕は一刻も早く先輩の気持ちを楽にしてあげたかった。
「紫ちゃんは、奈緒子ちゃんが入院した事を知らなかったんだよ。もちろん純くんの事もね。うちの親が奈緒子ちゃんのお母さんと話して偶然知ったみたい。……だから、責めないであげてね」
意味が分からなかったようで、「奈緒子ちゃんが入院した事を知らなかったから……責めないであげて?」と首を傾げながら聞き返してきた。