chocolate mint
それから、先輩と少しだけ打ち解けて話をした。
こんなに話をしたのは初めてで、食べ物の好みや、好きなバンドの話で盛り上がった。
二人で赤ワインを一本空ける頃には、空はうっすらと白み始めていた。
「布団、持ってくるから待ってて」
紫ちゃんの部屋に敷いていた布団をリビングに持ってきて、どうぞと勧めると、先輩は少しだけ酔ったトロンとした目を僕に向けて「ありがとう」と優しく微笑んだ。
その微笑みに心臓がドクリ、と音を立てる。
……ちょっと飲み過ぎたかもしれないな。
なぜかそのまま眠る気になれなくて、騒がしい心臓を落ち着かせるように風呂場へ行ってシャワーを浴びた。
そのまま自分の部屋に行こうとして、リビングの電気を点けっぱなしにしていた事に気がついた。
二人を起こさないようにと、そっとリビングに足を向けようとして……崎山先輩が起き上がっている事に気がついた。
……先輩は泣いていた。
綺麗な二重の瞳からポロポロと零れ落ちる涙を拭う事もせず、肩を震わせて泣いていた。