chocolate mint

それから、先輩と少しだけ打ち解けて話をした。

こんなに話をしたのは初めてで、食べ物の好みや、好きなバンドの話で盛り上がった。

二人で赤ワインを一本空ける頃には、空はうっすらと白み始めていた。


「布団、持ってくるから待ってて」


紫ちゃんの部屋に敷いていた布団をリビングに持ってきて、どうぞと勧めると、先輩は少しだけ酔ったトロンとした目を僕に向けて「ありがとう」と優しく微笑んだ。


その微笑みに心臓がドクリ、と音を立てる。



……ちょっと飲み過ぎたかもしれないな。



なぜかそのまま眠る気になれなくて、騒がしい心臓を落ち着かせるように風呂場へ行ってシャワーを浴びた。


そのまま自分の部屋に行こうとして、リビングの電気を点けっぱなしにしていた事に気がついた。


二人を起こさないようにと、そっとリビングに足を向けようとして……崎山先輩が起き上がっている事に気がついた。



……先輩は泣いていた。


綺麗な二重の瞳からポロポロと零れ落ちる涙を拭う事もせず、肩を震わせて泣いていた。

< 20 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop