chocolate mint
今日だって気を許せる人が側にいたんだから、思いっきり泣いてすっきりしてしまえばいいのに。
それでも自分の感情をさらけ出すこともせずに静かに泣く人だなんて。
声一つ、嗚咽一つ漏らさずに。
何でそんなに悲しい泣き方しかできないんだろう。
見ているこっちの方が、胸が潰れそうだよ。
……もう一人で泣かないでよ。
「……そんなに恋がしたいのなら、僕が相手になってあげようか?」
そっと傍らに寄り添い、ポニーテールの髪の毛に指先を通す。
さらりと髪が二つに割れた。
その髪の毛の間から覗いたうなじは、部屋の灯りに照らされて仄白く光り、酷くなまめかしく見えた。
……ごくり、と喉が鳴る。
「裕介」
名前を呼ばれたのは、衝動のままにうなじに唇を寄せようとした、まさにその瞬間だった。
ビクッ、と悪戯が見つかった子どものように肩が跳ね上がる。
そろそろと後ろを振り向くと、ソファーにひっくり返って眠っていたはずの紫ちゃんがいつの間にか起き上がってこっちをじっと見ていた。
その目は、確実に『これ以上触れたら、ただじゃおかない』と言っていた。