chocolate mint
「……っ。見て、た?」
「『僕が相手になってあげようか?』だって?……ぷっ、くくっ」
……最悪だ。全部見られてた。
崎山先輩に強烈に惹かれた瞬間も……たぶん、欲情した瞬間まで全部。
「裕介、あんた香織の事可愛そうにって思ってたよね?所詮叶わない恋なのにって」
「そんな事……思って無かった……よ」
口では反論していても、図星を刺されてどんどん顔が熱くなっていくのが分かる。
「あーあ、堕ちたね。……まぁ、今まで適当な付き合いしかしてこなかったんだから、あんたも一回くらいは叶わない恋ってのをしてみればいいんじゃない?……この子は絶対に一筋縄じゃいかないよ」
何を馬鹿な事を、とその時は思った。
自惚れでも何でも無く、今までの人生で彼女に関しては苦労した事は無かったから。
向こうから寄って来て飽きれば勝手に去っていく。嫉妬をされる事も無ければ、こちらが執着する事も無い。
崎山先輩だけじゃない。
純くんや奏一くんだって、お互い奈緒子ちゃんを好きなくせに何年も幼なじみのままで、死ぬほど回りくどくて何やってんだろうなって……心の中ではずっと思ってた。
だから知らなかったんだ。
片想いの恋が、こんなにも辛くて苦しいものなんだって。