chocolate mint
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「「また別れたの?!」」
僕と紫ちゃんが同時に驚く。
うなだれるように俯く香織ちゃんを、「だから、あいつは調子のいいだけの男だから、止めとけって言ったでしょ!」と紫ちゃんがばっさりと切り捨てた。
言葉のナイフなんて生易しいもんじゃない。
紫ちゃんの言葉は牛刀……いや、出刃包丁並みだ。
油断してたら、骨までズドン!と叩き切られてしまう。
「ちゃんと、私の事を見てくれるって……そう思ってたの」
可哀想に、縮こまって話す香織ちゃんの言葉は、居酒屋のガヤガヤとした空気の中に今にも溶けて消えそうなほど小さくなってしまっている。
金曜日の夜、僕たちは香織ちゃんに呼び出されて『紫山』へ来ていた。
そして、つい先日彼氏が出来たって嬉しそうに話していた香織ちゃんの別れ話を聞かされている。
「ちゃんと見てくれるヤツが、普通一ヶ月で別れると思う?あんたさ、26歳にもなって男見る目無さすぎ!ヤるだけヤられてポイ捨てされたに決まってんでしょうが!」
「……まっ、まだヤってなかったから!私だって、流石にその辺は慎重になるよ!学習するよ!」
「じゃあ、やっぱり身体目当ての男だったって事じゃないの!ヤらせてくれないから、あっさり捨てられたのよ!」