chocolate mint
目の前でどんどんヒートアップしていく耳を塞ぎたくなるようなやり取りに、眩暈を起こしそうになる。
ドロドロとした黒い嫉妬の塊を胸の中に押し込めて、僕は心の底から深い深いため息を吐いた。
「紫ちゃん、香織ちゃん、そろそろ終わろうね。いくら個室だからってこのままじゃ追い出されちゃうよ」
……それに、これ以上そんな話を僕は聞きたくない。
言えない言葉も胸の中に押し込めて、いつもの通り僕は仲裁役に徹した。
香織ちゃんが純くんに振られたあの日から、ちょうど一年が経とうとしていた。
香織ちゃんの純くんへの想いを聞いて、僕が香織ちゃんに恋をしたあの日。
昼過ぎにようやく起き出した香織ちゃんと、ドキドキしながら顔を合わせたけど、香織ちゃんは僕と好きな食べ物や好きなバンドの話をした所までしか覚えていなかった……。
そして現在。
弱気なくせに、意地っ張りな香織ちゃんの恋愛は変にポジティブな方向へと向かって行ってしまい、2、3カ月スパンでこんな反省飲み会が開かれている。
時にはこんな聞いてるほうが恥ずかしくなるようなやり取りが繰り広げられると……
信頼されてはいるんだろうけど、僕は全く男として意識されていないんだと、少しだけ……いや、かなり悲しい気持ちになってしまうのだ。